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後遺症による逸失利益 - 精神・神経症状の事例

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PTSD(心的外傷後ストレス障害)

PTSD(心的外傷後ストレス障害)などの『脳の損傷によらない精神障害』について、従来よりは後遺障害が認定されるようになりました。しかし事例によっては非該当になる場合や、認定されても低い等級にとどまる場合もあります。さらに認定されても労働能力の喪失率や喪失期間について争いになることが多く、賠償交渉をするにおいても一筋縄ではいきません。このような事例が問題となる場合は、早めに弁護士に相談することをお勧めします。

 

PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは、災害や事故、犯罪のようなできごとに出遭った後に残る「心の後遺症」のことです。交通事故によっても、個人の対処能力を超えるほどの強いショックを受けた場合に引き起こされることがあります。

PTSDの特徴

事故の体験を繰り返し思い出したり、何度も夢に見てうなされる

重要な事柄や活動に対する興味を失う

他人との関係が疎遠になる

感情の動きが乏しくなる

物事に集中できずにイライラする

怒りっぽい

寝付けない、寝てもすぐ起きてしまう

過度に怯えたり、警戒する

PTSDとして認定を受けるには?

極端に異常な体験をした

再体験(フラッシュバック)がある

回避行動(外傷を想起させる活動、場所等を避けようとする)がある

覚醒亢進症状(睡眠困難・集中困難・怒りの爆発など)がみられる

 

例えば

交通事故に遭い、PTSDの症状が出た21歳女性場合…

首の痛みなど、PTSDの症状を示す外傷性神経症があり、10年間10%の労働能力喪失が認められ、損害賠償を受けることが出来ました。

PTSDその他の非器質性精神障害が問題となった事案

喫茶店経営の女性(固定時49歳)につき、混合性解離性(転換性)障害、PTSDに該当すると主張した事案で、PTSDを認定せず、ヒステリー症状、混合性解離性(転換性)障害(2級3号)として、67歳までの100%の労働能力喪失を認めた(さいたま地判平15.10.10)

主婦兼看護助手の女性につき、事故により中等程度のPTSDで12級相当の後遺障害が残ったとし、PTSD以外の頸椎捻挫後の頚部痛、両上肢痛しびれ、頭痛等(14級10号)、腰痛捻挫後の腰痛、両下肢痛等(14級10号)とあわせて、10年間14%の労働能力喪失を認めた(東京地判平17.11.30)

男子専門学校生・アルバイト(固定時28歳)につき、PTSD発症は否定したが、うつ状態は9級10号に該当するとし、賃金センサス男性学歴計全年齢平均を基礎に、10年間35%、その後29年間14%の労働能力喪失を認めた(名古屋地判平19.11.21)

RSD(CRPS)

RSD(CRPS)とは、外傷、手術、その他の組織損傷の後遺症です。交通事故で外傷を受けると、神経伝達物質であるアドレナリンが放出されます。アドレナリンは血管を収縮させて出血を抑制する働きがありますが、外傷が治癒されたにもかかわらず、アドレナリンが過剰に放出され続けると、血管収縮による血流障害が生じ、慢性の痛みや痺れなどを誘発します。

RSDの特徴

疼痛・灼熱痛のような激しい痛みがある

炎症などが原因で体の組織や器官の一部が腫れ上がる

骨萎縮(斑状の骨粗しょう症)が見られる

皮膚が光沢や緊張を失い、蒼白となり、皮膚温が低下すると乾燥し、発疹、潰瘍、膿疱といった多様な皮膚疾患を併発

極めてまれに、生命の危機に及ぶような再発性の皮膚感染により手足の切断が必要となる場合もある

RSDとして認定を受けるには?

RSDは症状が多様で、他の病気の症状と似ていることから、立証が困難な傷病名だと言われています。適切な後遺障害等級を獲得するためには、早期に、高度な専門医に治療と立証をお願いしなければなりません。

 

例えば

交通事故での頚部挫傷が原因で左腕にRSDを発症した27歳アルバイト女性の場合…

首の痛みなど、PTSDの症状を示す外傷性神経症があり、10年間10%の労働能力喪失が認められ、損害賠償を受けることが出来ました。

RSD(CRPS)が問題となった事案

システムエンジニアの男性(固定時36歳)の左上肢のRSD(自賠責12級12号)につき、かなりの頻度で治療を受け、1回の治療において5ヶ所に局所麻酔を注射しなければ効果を期待できない状況にあり、軽易な労務以外の労働に常に差し支える程度の疼痛であるとして、31年間56%の労働能力喪失を認めた(東京地判平19.7.23)

看護師女性(固定時34歳)の右膝痛、右膝の異常知覚等(自賠責非該当)につき、これらの症状がRSDであると認め、少なくとも局部に頑固な神経症状を残すもの(12級12号)に該当するとして、事故前収入627万円余を基礎に、10年間14%、その後10年間10%の労働能力喪失を認めた(東京地判平17.2.15)

局部の神経症状が問題となった事案

カラオケボックス店員の女性(固定時27歳)の事故により発症したタナ障害による左膝疼痛(12級12号)につき、賃金センサス女性全年齢平均を基礎に、40年間14%の労働能力喪失を認めた(大阪地判平18.4.25)

眼科医の女性(固定時33歳)の頚部痛・後頭部痛・眼精疲労・左手の振戦(14級10号)につき、左手の振戦のため手術ができなくなり研究職に転向せざるをえず、従前のアルバイト収入が得られなくなったことから、事故前年収1130万円余を基礎に、10年間12%の労働能力喪失を認めた(甲府地判平17.10.12)

その他

主婦(固定時54歳)が、事故により頭部を打撲し、事故の翌日以降左上肢痛・挙上不可・左上肢運動不全・知覚障害を訴え、事故から約1年後には左上肢麻痺・左上下肢痛の症状が残存し、室内は杖歩行で用便も可能だが外出には車椅子を使用して近親者が付き添い、入浴には介護が必要であるものの常時介護が必要とはいえない状態となった事案で(自賠責は14級10号)、頸髄損傷等の他覚所見はないが、労働能力喪失率100%、喪失期間10年とした上で、転換性障害の発生ないし心因性の素因を考慮して減額した(京都地判平16.6.16)

 

 

 

 

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