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治療関係費の事例

治療費

治療費として認められるのは、交通事故で負った障害を治療するために必要かつ相当な実費全額のことです。必要性、相当性がないときは、過剰診療、高額診療として否定されることがあります。 過剰診療とは、診療行為の医学的必要性ないしは合理性が否定されるものをいい、高額診療とは、診療行為に対する報酬額が、特段の事由がないにも拘らず、社会一般の診療費水準に比して著しく高額な場合をいいます。 交通事故の場合でも健康保険証を提示することによって、健康保険制度を利用することができます。この場合には、自賠責の定型用紙による診断書、診療報酬明細書、後遺障害診断書を書いてもらえないことがあるので、事前に病院に確認しておくと良いでしょう。

頚椎捻挫等による16ヶ月の通院(実治療日数305日)のうち3ヶ月を超える期間の因果関係が争われた事案で、被害者には詐病による利得を図る意図はなく、意思も不必要な治療に及んだとまで見ることはできないとして、請求どおりの治療費全額317万円を認めた(横浜地判平5.8.26)

受傷が否定された低髄液圧症候群について、事故と因果関係が認められない筋合いではあるが、低髄液圧症候群と診断してその治療をしたのは医療機関側の判断と責任によるものであるから、被害者が現にその治療費を支払っている以上、安易に減額することは相当でないとして106万円余認めた(福岡高判平19.2.21)

症状固定後の治療費

一般には、否定的に解される場合が多いですが、その支出が相当なときは認められることもあります。リハビリテーションの費用は症状の内容、程度によります。

頭部外傷Ⅲ型当による植物状態(1級3号)の16歳男子高校生につき、症状固定後も個室の使用が必要であるとして、症状固定から退院まで405日間分の部屋代合計407万円余を認めた。

将来の手術、治療費等

そしゃく機能障害(10級2号)、左肩関節機能障害(10級10号)、左肩鎖関節亜脱臼にともなう鎖骨変形(12級5号、併合9級)の34歳の女性エステティシャンにつき、症状固定後も障害の悪化を防ぎ状態を維持するために、医師の指示に基づき鍼治療およびボトックス療法を継続して有効だったとし、症状固定から20年間、週1回の鍼治療、3ヶ月に1回のボトックス療法の費用として合計583万円余を認めた(東京地判平18.12.27)

頸髄不全損傷による精神・神経障害(7級4号)の鳶工男性(50歳)につき、症状固定後も痛みの緩和のために受けている星状神経節ブロック注射の治療を今後も受ける蓋然性があるとして、その費用を実績から控えめに見積もり月額1万5000円とし、平均余命28年間合計268万円余を認めた(東京地判平16.12.8)

鍼灸・マッサージ費用・器具薬品代など


症状により有効かつ相当な場合、ことに医師の指示がある場合などは認められる傾向にあります。

頭部外傷、左肘頭骨骨折、左膝後十字じん帯損傷等の公務員につき、被害者は医師と話し合ってリハビリテーションを受けるために接骨院に通院し、運動療法および電気治療などを受け、施術を受けたときには症状が軽減したこと、病院ではリハビリテーションを受けていなかったこと等から、接骨院での治療費全額163万円余を認めた(神戸地判平18.12.22)

頚椎捻挫を負った妊娠中の韓国人主婦につき、通常のX線検査や投薬等が受けられなかった場合に、帰国して受けた漢方治療の費用(日本円に換算して100万円余)を認めた(東京地判平10.1.28)

その他

5級高次脳機能障害等(併合3級)の固定時13歳の小学生女児につき、脳機能改善に有効な音楽療法の一環として必要との医師の診断を受けて通ったスクール費用、および交通費13万円余を認めた(大阪高判平19.4.26)

入院中の特別使用料

医師の指示ないし特別の事情(症状が重篤、空室がなかった等)があれば認められます。

植物状態となった被害者につき、約6年間の特別室の差額ベッド代1503万円余(日額7000円余)を認めた(大阪地判平2.4.23)

びまん性脳損傷等により植物状態(1級3号)の50歳の男性被害者につき、将来も入院することが見込まれるとして、平均余命の25年間、日額4000円の将来の差額ベッド代、合計2057万円余を認めた(東京地判平12.9.27)

 

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